新人スタッフ必見!BLSの基本と現場の実際

皆さんは急変時の対応に自信がありますか?

私自身は、数年前に比べればかなり自信がついてきましたが、それでもまだまだ半人前だと自覚しています。それが新人さんや、救急系の部署に配属したばかりであれば、なおさら自分の前で急変が起こるなと祈ってしまうのも無理がないと思います。

今回は、急変発見時の初期対応である一次救命(BLS)についての記事です。

BLSにはアルゴリズムが定められており、基本的にそれに沿って対応していくことが求められます。

アルゴリズムに沿った基本的な手順と、実際の急変の現場での状況や心境もあわせて綴っていますので、参考にしていただければと思います。手順はもう頭に入っているという方は、『BLSの手順』の項は読み飛ばしていただいてかまいません。

目次

BLSの手順

BLSは、発見から対応まである程度の流れが決まっています。この手順については理解している方も少なくないと思いますが、簡単におさらいしていきましょう。

①意識レベルの確認

あなたは訪室時に、患者の意識がない・あるいは様子がいつもと違うと感じた場面を想定してください。

まずは患者に大きな声で呼びかけます。また、痛み刺激を与える、両肩を叩いて刺激することで反応を確認します。

それでも反応がなければ、この時点で急変であると考えてください。これが第一発見の場面になります。

②応援を呼ぶ

急変時に1人で対応することは、十分な対応ができず、患者の命を危険な状態にしかねません。

かと言って、急変を発見した現場を離れることも絶対にしてはいけません!自分が離れている間にも患者の状態はどんどん悪くなります。あるいは何らかの反応を見逃してしまいます。

急変を発見したときは、迷わず緊急コール(スタッフ専用コール)を押しましょう!!

新人の頃はおそらく、目の前で起きている患者の変化が、急変かどうか自信がなく緊急コールを押すことを躊躇してしまうと思います。しかし、あなたが迷っている間にも患者の命の危機は刻一刻迫っているかもしれません。

急変の判断に自信がなおさら、先輩スタッフに駆けつけてもらい、その状況を適切にアセスメントしてもらうという意味でも、すぐに応援を呼びましょう!

③呼吸状態・循環動態を確認する

患者の反応がなく、緊急コールで応援を呼ぶことが完了しました。早ければ30秒〜1分ぐらいでスタッフが駆けつけてくれるでしょう。

他のスタッフが到着するまでの間にあなたが取るべき行動は、気道確保と呼吸の確認です。顎先を持ち上げ、気道を確保した状態で、患者の胸郭の動きを見る・呼吸音を聞くことで、患者の自発呼吸の有無を確認します。自発呼吸がない、あるいは努力呼吸・死戦期呼吸であれば、④に進みます。

また、同時に頸動脈の触知をおこないます。5〜10秒触知しても脈が触れなければ心肺停止とみなします。ただ、焦っていて頸動脈の触知が難しければ、呼吸の確認だけでもおこないましょう。

④胸骨圧迫を開始する

③の場面で自発呼吸がない、心肺停止状態であることが確認できれば、速やかに胸骨圧迫を開始してください。

正しい圧迫部位・深さ・テンポ・姿勢であるか確認しながら、焦らずにおこなってください。

  • 圧迫部位:胸の真ん中あたり(左右の乳頭を結んだ中心あたりをめやすに!)
  • 深さ:5cm以上6cm以下。圧迫後は一度完全に圧迫を解除する(重要!)
  • テンポ:100〜120回/分

⑤応援到着後の対応

あなたが患者の呼吸・循環の状態を判断し、胸骨圧迫を開始すると、まもなく他のスタッフが救急カートを持って駆けつけてきました。

状況説明は簡潔に!

まずは、スタッフに現在の状況を簡潔に伝えます。とは言え、自分自身がかなり焦っている状態だと思うので「訪室したら意識がなくて、呼吸と脈もなかったので胸骨圧迫開始しました。」という旨をとりあえず伝えられればオッケーです!

役割分担を明確にする

急変の現場では、間違いなくスタッフ全員少なからず混乱します。まずは慌てず、誰がその場の指揮をとるのか、誰が記録やタイマーを担当するのか、胸骨圧迫の交代要員となるのかなどを明確にしましょう。この場面では必ずしも年長者やその日の業務リーダーが指揮をとる必要は全くありません!とにかく速やかに行動できることを第一としてください!(とはいえ、経験年数が長く視野の広いスタッフが指揮をとることが多いですし、それがスムーズに進行するという体感です)

夜勤帯など、スタッフの数が十分でなければドクターホワイトコールをおこなうことも視野に入れておきましょう。

また、混乱を避けるために、ひとつひとつの動作を声出ししておこない、全体で統率を図りましょう

質の高い心肺蘇生をおこなう

既にあなたが第一発見し、胸骨圧迫を開始していますが、他スタッフと協力してさらに質の高い心肺蘇生に切り替えましょう。

背板を入れて、胸骨圧迫の質を高めてください。エアマットを使用している患者であればただちにエアマットの空気を抜いてください。

また、胸骨圧迫を1人が続けていると当然疲れてきます。そのときは声をかけあい、他のスタッフと遠慮なく交代しましょう。適切な深さやテンポが保てなければ元も子もありません!

バッグバルブマスクなど、マスク換気の準備ができれば、人工呼吸をおこないます。胸骨圧迫と人工呼吸のタイミングは30:2でおこなってください。

このとき重要なのが、人工呼吸時などの必要時を除き、絶え間なく胸骨圧迫を続けてください!

AED/DCの準備ができたら電気除細動をおこなう

AEDやDCが到着すれば解析をおこない、電気除細動の適応であれば実施します。この際にも声掛けをおこない、スタッフが患者から離れていることを確認してください。

速やかに胸骨圧迫を再開する

AED実施後、患者の意識や脈拍が戻っていないことが確認できれば、速やかに胸骨圧迫・人工呼吸のサイクルを再開してください。このサイクルを2分毎に繰り返します

また、応援で救命救急スタッフが到着すると、さらに高度な救命処置(二次救命処置:ACLS)に速やかに移行します。BLSが身につけば、ACLSについても学習しておきましょう!

急変時の現場の実際

現場での実際の状況はどうでしょうか。

手順の中でもお伝えしてきたとおり、スタッフの混乱を招きます。「早くなんとかしなければ!」と興奮状態にもなるかもしれません。呼吸を整えて、冷静さを保ちながら自分の役割を見つけるようにしましょう。

また、ドクターホワイトコールをおこなえば、部署・病棟を超えて本当にたくさんのドクターや看護師がぞろぞろと集まります。そのスタッフに適切かつ簡潔に状況や患者の病態を説明し、役割を分担しなければいけません。

時間差で集まったスタッフが重複した行動(例えば、ごく短時間のうちに繰り返し血液ガスを採取するなど)により無駄な時間を生まないように、スタッフ全員が声かけ、声出し確認をおこなうことが本当に大切だと感じています。

急変患者に全スタッフの焦点が当たってしまいがちですが、病棟には他の患者もたくさんいます。夜勤帯の急変時などの初期対応はどうしても全スタッフで対応しなければならないかもしれませんが、応援が駆けつけて人員に余裕ができれば、他の患者の安全を確保することも忘れずにおこないましょう!

まとめ

今回の記事では、BLSのアルゴリズムに沿った対応の手順を中心に紹介しました。

この手順を頭に叩き込んでおくことは医療者であれば必須になります。しかし、これを単に手順として覚えておくのではなく、現場で実践として扱えるぐらいまで仕上げておかないと意味がありません

頭の中で何度もシミュレーションをおこない、実践レベルで想定しておきましょう。また、第一発見者になった場合や他病棟のホワイトコールで自分が一番に駆けつけた場面など、さまざまなケースで具体的にイメージしておきましょう。

現場はイメージどおりではなく混乱するし、慌ててしまうのが詰まるところの現実ではありますが、それでも頭の中で繰り返したイメージは少しでもスムーズに体や頭を動かすに役に立つことは間違いないでしょう。今回の記事に書いた現場の実際の状況も少しでも参考になれば幸いです。

また、部署のスタッフ複数名で、急変の事例を作成し、BLS用の人形を借りてきてシミュレーションをおこなうことも非常に有効です。私の所属するCCUでも、自部署で起こりうる急変パターンを想定し定期的にシミュレーションの機会が設けられています。個人だけでなく他スタッフとの連携の力も向上するので、これができる環境にあればぜひおこなうことをおすすめします!

急変対応の質が患者の予後を大きく左右します。あなたの目の前で起きた急変に、少しでも質の高い対応ができるように、日頃から実践レベルで備えていきましょう!

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