コロナ治療の救世主?ネーザルハイフローを正しく理解する

タイムリーなお話ですが、ネーザルハイフローが、「コロナウィルス感染患者に対する新たな治療法」といった報道がされたことを耳にしました。これは果たして本当に正しいのでしょうか?

今回は、ネーザルハイフローの仕組みを説明し、コロナウィルスに対して有効であるかについて検討していきます。

目次

ネーザルハイフローとは

まずは、ネーザルハイフロー(以下HFNC:ハイフローネーザルカニューレの略)とはどのようなものであるかを紹介します。

HFNCとは、専用の経鼻カニューレを使用した高流量酸素システムを指します。具体的には、30~60L/分の流量、21~100%の酸素濃度で設定して、供給することが可能です。リザーバー付き酸素マスクなどでは、酸素濃度を上げるほど総流量が減少してしまうため、効果的な酸素供給ができない場合がありますが、HFNCでは、酸素濃度と並行して総流量を確保することが可能となります。

メリット

挿管などと比べると、経鼻カニューレを装着するだけなので、比較的少ない侵襲で、高流量・高濃度の酸素供給が可能となります。経鼻であるため、会話や食事が容易に可能になります。

高流量のフローが、死腔のCO2をはけだす効果があります。

また、この高流量のフローがPEEPの役割を果たし、呼吸時努力の軽減や肺胞虚脱の予防につながります。

PEEPの重要性については下の記事でも取り上げていますので、ご参照ください。

デメリット

高流量のフローが鼻に噴きつけ続けるため、侵襲が少ないとは言え、患者さんにとって不快感や不安感につながります。

HFNCには、加温加湿のために蒸留水を使用していますが、この消費量が著しく激しいです。そして、蒸留水切れを起こすと、患者さんに乾燥した35度前後の熱風を送り込んでしまうため、気道内の乾燥や損傷のリスクにつながります。蒸留水を絶やさないように管理していく必要があります。

また、PEEPの役割がありますが、人工呼吸器のようにその値を設定・調整することはできません。

臨床での管理方法

流量は、患者さんの体格や必要な換気量に応じて調整します。

酸素化を確認しながら酸素濃度を調整し、漸減していく際には、まずは濃度から調整し、次に流量を減らしていくイメージになります。

コロナ患者への有用性は?

では、コロナ患者さんに対する使用の実際について検討していきます。

上でも述べたように、比較的少ない侵襲で使用可能であるため、挿管を希望しない患者さんなどにも使用可能です。

リザーバー付き酸素マスクよりも高流量・高濃度の酸素投与が可能であり、PEEPもかけられるため、患者さんの呼吸に対するサポートを果たしてくれます。

しかし、NPPVや人工呼吸器のように自発呼吸に同調して呼吸をサポートすることはできません。あくまで噴きっぱなしの高流量酸素が患者さんに投与されるというイメージになります。また、HFNCがPEEPの役割を果たすことを先述しましたが、人工呼吸器などと比べれば軽微なものとなります。ですので、NPPVや人工呼吸器より優れた効果を示すとは言い切れません。

また、HFNCは、経鼻カニューレから投与される高流量換気であり、これは開放式のシステムであるため、エアロゾルの拡散につながり、医療者の二次感染のリスクが高まってしまうことにもなります。

まとめ

患者さんへの侵襲を軽減しながら高流量換気を可能にできる素晴らしい手段のひとつがネーザルハイフローです。

しかし、NPPVや人工呼吸器に勝る手段とは言い切ることはできず、挿管を要する患者さんにHFNCで代用しきることができるわけではありません!

医療者への感染リスクも高まるため、管理をより慎重にする必要もあります。

患者さんの呼吸状態・全身状態をふまえて、医師の適切な判断のもと使用される酸素療法のひとつであることを覚えておきましょう。

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