IABPのしくみと効果

集中治療室において、IABP(大動脈バルーンパンピング)は、心筋梗塞後で心筋にダメージを負っている場合や重症心不全の患者に使用されます。

今回の記事では、IABPのしくみと、それによってもたらされる効果について説明していきます。

目次

IABPとは

そもそもIABPとは何でしょうか?

IABPとは、補助循環をおこなってくれるデバイス(機器)の1つです。

胸部下行大動脈にバルーンカテーテルを置いて、心臓の拍動に合わせてバルーンを膨らませたりしぼませたりすることで、血液循環に圧をかけながら補助してくれます。補助循環のうち、IABPは「圧補助」の役割を担っています。

バルーンが膨らむときにもしぼむときにも「圧補助」の効果の役割に違いがあるので、そちらも見ていきましょう。

ダイアストリック・オーグメンテーション

IABPは、心臓の拡張期にバルーンが膨らみます。これをダイアストリック・オーグメンテーションといいます。こちらの効果は、次の3つです。

  1. 拡張期血圧・平均血圧の増加
  2. 冠動脈血流量の増加
  3. 脳・腎血流量の増加

拡張期血圧・平均血圧の増加

バルーンが大動脈内で膨らむことで、バルーンの容量(30〜40cc程度)分の血液が末梢側に押し出されて、末梢臓器に流れ込むことで、拡張期血圧が上がります。

拡張期血圧が上がるので、それに伴って平均血圧も上がります。

冠動脈血流量の増加

冠動脈とは、心筋に走行する動脈で、心筋に酸素供給をおこなっています。全身への血流は主に心臓の収縮期に流れ込みますが、冠動脈への血流は、心臓の拡張期(心筋が緩んでいるとき)に多く流れ込みます。

冠動脈血流は、拡張期血圧が高いほど流れ込みやすくなります。IABPが拡張期血圧を増加させてくれるので、冠動脈の血流の増加、すなわち 心筋への酸素供給量の増加 の効果を発揮してくれます。

IABPでは、こちらの効果が最も重要であるといわれています。カテコラミンや補助循環で無理やり血圧を上げるよりも、自分の心臓が酸素を得て元気に動いてくれる方がいいのは何となくイメージがつきますよね。

脳・腎血流量の増加

脳や腎臓などの臓器は、血圧が高いほど血流がよく流れ、血圧が低くなれば血流量が減ってしまう、血圧依存の臓器になります。

前述のとおり、IABPによって平均血圧が上がるため、これらの臓器への血流量が増加します。

シストリック・アンローディング

膨らんだバルーンは、心臓の収縮期にしぼみます。これをシストリック・アンローディングといいます。

こちらの効果は主に次の1つです。

  • 心筋の酸素消費量の軽減

心筋の酸素消費量の軽減

バルーンが膨らむときに30〜40ccの血液が大動脈から末梢臓器に送られています。つまり、バルーンがしぼむとき、大動脈内にはこの30〜40cc分の血液が少ない状態となります。大動脈内の血液が少ない分、心臓から血液が流れ込みやすい環境がつくられるわけです。

心臓から血液を送り出す際の抵抗を後負荷といい、この後負荷が小さくなっていることで、心筋はより少ない力で血液を全身に送り出すことができます。つまり、 心筋の酸素消費量を軽減する ことができます。

まとめ

IABPは、心筋の酸素供給量を増やし、酸素消費量を減らしてくれます。

これにより、ダメージを受けている心臓を休ませながら循環動態をサポートしています。

ただし、あくまでも「補助循環」であり、IABPによって原因となった病態を解決することはできません。PCIや外科的手術によって治療をおこなうまでの「補助」であることも覚えておきましょう。

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