皆さんの病棟では、人工呼吸器を装着した患者さんはいらっしゃるでしょうか?
人工呼吸器には様々なモードや設定があり、初見ではサッパリわからないと思います。そんなたくさんの設定の中でも、おそらくどのモードでも設定されているものがあります。
それが PEEP です。今回は、このPEEPの意味と役割について説明していきます。人工呼吸器をこれから勉強するという方は、ぜひこれを取っ掛かりにしてみてください。
PEEPとは
まずは、PEEPとは何なのかをみていきます。
PEEPとは、「Positive End-Expiratory Pressure」の頭文字をとったものです。日本語で訳すと「呼気終末陽圧」です。
つまりどういうことでしょうか?
これは、人工呼吸器かによる呼気終了時、すなわち、患者さんに送気された空気が体外へ排出される終了時点で、気道内圧を0mmHgにするのではなく、一定の陽圧をかけたままにするために用いられます。
臨床ではこのPEEPを3~5cmH2O程度に設定されることが多いです。
なぜPEEPは必要なのか?
正常な肺胞
呼気終了時点で一定の陽圧をかけるのがPEEPの役割であることは理解できましたか?
では、次に、PEEPはなぜ必要なのかをみていきましょう。
私たちの肺胞は、正常な状態ではどのような動きをしているかご存じですか?吸気時には膨らんで呼気時にはしぼんでいる、となんとなくイメージしていませんか?
実は、正常な肺胞では、膨らんだりしぼんだりせず、吸気時も呼気時も一定の大きさで膨らんでいるのです。
肺胞虚脱
痰・異物などにより気管や気管支が閉塞されると、空気が送り込まれず、肺胞がしぼんでしまいます。これを肺胞虚脱といいます。
では、肺胞虚脱が起こってしまうとどうなるのでしょうか?
これは、想像のとおり、十分な換気ができなくなり、低酸素血症などの原因となってしまいます。
では、人工呼吸器などの陽圧換気下で、虚脱した肺胞があるとどうなるでしょうか?陽圧で換気しているから虚脱していても肺胞に空気が送り込まれるから問題ないでしょうか?
虚脱している肺胞を再び膨らませるためには、従来の2倍以上の陽圧が必要となってしまうのです。風船をイメージしてもらえばわかりやすいのですが、ぺちゃんこの風船と、ちょっと膨らんだ風船では、膨らませるのに必要な力は全然ちがいますよね?
つまり、肺胞虚脱を起こすと、それだけ膨らみにくく、要する力も大きくなってしまいます。人工呼吸器を使って陽圧換気をおこなっていても、十分に換気ができないリスクにもつながってしまいます。
PEEPの役割は?
PEEPの役割は、「肺胞虚脱を防ぐ」ことです!
呼気終了時にも気道内全体にちょっとだけ圧力がかかっていることで、しぼみそうな肺胞がしぼみきらずに保たれます。そのおかげで、次の吸気時にもちゃんと陽圧がかかって膨らんでくれるため、効果的に換気をおこなうことができるというわけですね。
まとめ
肺胞虚脱を防ぐために、どの設定モードでもPEEPは設定されています。
PEEPがかかっていることは、人工呼吸器による陽圧換気を効果的にするだけでなく、患者さんに自発呼吸がある場合にも同様に役立ちます。患者さんが呼吸で肺を膨らませるために必要な力を小さくしてくれるため、呼吸筋疲労を軽減してくれます。人工呼吸器を必要とするような状態の患者さんでは、楽に自発呼吸ができることもかなり重要となります。
臨床で人工呼吸器を見かけたときは、PEEPがきちんとかかっているかも確認してみてください!
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